こんにちは。ウーヴン方舟計画です。
おめでとうございます。あなたは、ウーヴン・シティの住人に選出されました。
市のホームページ内特設ページにて、静岡県裾野市へ住民仮登録をおこなってください。
ログインパスワードは、次のDMにてお知らせいたします。
ご存じのとおり、ウーヴン・シティは現在建設中です。転入はXX年(予定)となりますが、今回の仮登録を行うことで、シティの市制開始時の本登録をスムーズに行うことができます。
なお、期限は20XX年XX月末までとなります。ご注意ください。
富士山の裾野でお待ちしております。
静岡県裾野市 ウーヴン・シティ
http://www.city.susono.shizuoka.jp/
復興特需によって経済をなんとか建て直した日本……とはいうものの、かつてこの国を賑わせたというバブル経済ほどの勢いはないらしい。
列島を襲う二つの震災と大噴火により、計画を一時中断せざるを得なかったウーヴン・シティも建設再開の目処が立ち、5年がかりのプロジェクトが発表された。
更地となったシティ建設予定地の地下空間には、耐震地下ビルの建設が進められている。その他、新エネルギーの利活用、居住空間や公共施設の全スマート化など、未だかつて人類が目にしたことのない、まさに革新的で実験的な都市空間が整備されつつあった。
そしてそのプロジェクトのひとつが「ウーヴン方舟計画」。これは、数あるSNSの過去の膨大な投稿をさかのぼり、ウーヴン・シティに興味をもっているアカウントを抽出、住人を無作為に選び出すというものだった。
ウーヴンシティから来たDMを閉じ、「えっ、うわぁ」と心の中で言いながら、僕はSNSにつぶやいた。
「トヨタの方舟に選ばれた」
「ネオ人類になります」
ウーブン・シティの建設が始まったとき、そこで暮らすことを夢見ていた。
2021年。その頃世界は、とある感染症のパンデミック下にあった。
僕はといえば、とりわけやりたいこともなく、自室の窓から見える鳥や雲を眺め、ネット上で言葉遊びに興じる日々を送っていた。胸を熱くするものもなく、この先何もいらないから早く死んでおきたいなどとぼんやり考えていた。
「これまで得たものを全て捨て、トヨタのウーヴンシティで革新的な生活を送るネオ人類になりたい」
当時流行していたSNSに書き込んだこんな一言が、何十年も経って掘り起こされるなんて思ってもみなかった。
つづく