1SNSに目をやると「ウーヴンシティ行きおめでとう」という感じのメッセージがいくつか届いていた。
今のSNSは、単一の企業が運営するサービスのみになっている。
あの頃はInstagram、Twitter、Facebookのようなタイムライン型のものや音声・動画などのライブ配信型のものなど多種多様のサービスがあった。僕が件の投稿をしたTwitterも今はもうない。
それらに代わって世界中の人々に使われているのは、ChoiceというSNSだ。
自分の投稿をタイムラインに流しながら、コミュニティ機能を使えばライブ配信や画像公開ができる。タイムラインには国や地域を設定して見るパブリックビュー、ユーザーを選んで見るカスタマイズビューがある。
Choiceを運営するのは、かつてのSNSの大手企業が合同出資をして立ち上げた会社で、各企業のノウハウを結集してChoiceを作ったらしい。
創業と共に新サービス「Choice」のリリース日、生存アカウントの移行完了後に各SNSを廃止することを発表し、大きな話題になったことを覚えている。
Choiceはパブリックビューのおかげで、投稿に興味をもってくれた見ず知らずの人も気軽にメッセージをくれる。
Twitterがなくなるときにはかなり衝撃も憤りもあったが、リリース後、Choiceの良さを知るにつれ、新しいSNSに移行する日が楽しみだった。
もちろん、ウーヴン方舟計画からのDMもChoiceを通して受け取った。
もう一度、DMを開いて読んでみる。間違いない、僕はウーヴンシティに行くらしい。
僕はもう一件のDMを開いて、ログインパスワードを確認し、裾野市のホームページへのリンクをタップした。
右端に表示されていた、特設ページはこちら"wovencity"がすぐに目に止まる。
タップすると、ようこその文字が並ぶログイン画面が現れた。
(えっと、ログインIDは、 マイナンバーを入力してください…?)
マイナンバーとは、日本に住民票を有するすべての人に割り当てられた12桁の個人番号で、2016年に行政による利用が開始された。カード普及のために総務省が一定期間ポイントを配ってカード化を促していたが、カードにもポイントにも興味がない僕は通知カードのまま眠らせていた。
しまいこんだ通知カードをみつけ、画面にマイナンバーを入力する。続いて、ログインパスワードを打ち込んだ。
『こんにちは、b9076。私はアシスタントのセレーネです』
画面中央には、ようこその代わりに白い球体が映し出されている。どうやらこの丸いやつがしゃべっているらしい。
急な出来事に驚きながら画面をよく見てみると、トークができそうな入力フォームがあったので書き込んでみた。
「こんにちは」
『b9076がいらっしゃるのを待っていました。さっそくですが、表示されている個人情報を確認してください』
僕のマイナンバーに登録された情報が表示されている。当たり前か。
「確認しました」
白い球体は少しの間くるくる回っていたかと思うと、止まって、『仮登録が完了しました。なにかございましたら、各ホームの私たちセレーネにお申し付けください』とだけ言い、消えた。
なんだかもう一度見たくなって、何度かログインし直してみたが、そこには仮登録が完了しましたと表示されるだけだった。
ちょうどその一週間後、ウーヴン方舟計画から小包みが家に届く。開けると、あの日画面に映っていたあの白い球体がそこにあった。
つづく