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2小包みには、白い球体と一緒に一枚の用紙が入っていた。
b9076 様
ようこそ、ウーヴン・シティへ
こちらはセレーネ。
あなたのアシスタントです。なんでもお申し付けください。
セレーネは、ウーヴン・シティへの切符です。
ウーヴン・シティに持ち込めるのは、あなた自身、セレーネ、当日のお召し物のみ。これまで得たものを置いていける者だけが、セレーネと共にウーヴン・シティで暮らすことができます。
セレーネは、ウーヴン・シティに入ればコードレスで絶え間なく電力が供給されますが、こちらではコードによる電力供給が必要です。まずは、付属のコードを台座につないでセレーネを起動させてください。
どうぞ、ウーヴン・シティ完成まで快適にお過ごしください。
ウーヴン方舟計画
ひとまず、僕は台座とコードをつなぎ、プラグをコンセントに差し込んだ。
台座の上の球体が微かに浮いてゆっくり回転を始める。一周ほどすると明かりがつき、あのときと同じ声で話し始めた。
『こんにちは、私はアシスタントのセレーネです』
「こんにちは」
明かりがつくと球体の表面には陰影があり、地球の衛星を模していることが分かった。
『初めまして、b9076。またお会いしましたねと言った方がよろしいですか』
「とりあえず初めまして、かな」
『初めまして、よろしくお願いします。手紙にあったように私たちはウーヴン・シティへの切符です。いままで得てきたものを手放すお手伝いをしていきます』
「手放す…?」僕の一言から何かを察したかのように、セレーナは続けた
『ウーヴン・シティは素晴らしいところです。しかし、人間が動物のとある習性にそう名付けたように、人間自身にも帰巣性があります。ホームシックと呼んでいるようですね』
セレーネによると、ウーヴン・シティで新しい価値に触れすぎた後に、ホームシックを起こして帰ると元の生活に適応できずに壊れてしまうらしい。セレーネは片道切符だということだった。
僕はずっとそれを望んできたし、願ったり叶ったりだと思った。
人生がどうであれ、生きていることが苦しい。
何者でもない自分を放棄し、人間関係、土地、お金、生活、命、あらゆるものから解放されたかった。
つづく